ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「うわー、それ、彬良くん、可哀想すぎ。
全く気づいてもらえてなかったなんて!」

え、え、そうなの?
いやいや、でも!

「じゃ、じゃあ。K大に入学してから、全く話をしなくなった意味がわからないです!
それに……彬良、手当たり次第に女の子と付き合って…。
正直、ショックでした。
高校時代は私が1番近くにいたはずなのに。
入学した途端、手のひら返したように…。
だから、私達は付き合ってたわけじゃない。
キスはお礼。
そこは割り切ってって…
……本当に…付き合ってなかったんです…」

あ、マズい…
涙腺が…。

あの時のショックはなかなか忘れられない。
なんの約束もしてなかったんだもん。
彬良が裏切ったわけでもないんだけど…。
やっぱり、すごく辛かった。
大学に入っても一緒にいられると思ってたから…。
付き合ってるとか、付き合ってないとか、
正直どうでもいい。
ずっと一緒にいられるなら、そんな言葉で縛られなくても構わなかった。
こんなことなら、K大になんて行かなきゃ良かったって思ったんだよ。

「…灯里ちゃん……。
ごめんなさい。傷つけたり、追い込みたいわけじゃなかったの。
でもね、何か…誤解があるんじゃない?
2人の間に…。」

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