ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
誤解…?

それはない。
彬良はモテる。
高校時代だって、成績が良い上に、奥様譲りの綺麗な顔で、イケメン男子トップ5に必ず入ってた。

何より、見たもの。この目で。
大学構内を毎日のように女の子と腕組んで。
それも、見るたびに違う女の子。
きっと、受験勉強が終わって、タガが外れたんだって思った。

違うの?

それに、今更だよ。
8年も前のことだ。
大学に入学してすぐ、彬良とはなんとなく疎遠になってしまって、父が亡くならなかったら、そのまま接点を持つこともなかっただろう。

その疎遠になった大学時代。
結局、私に彼氏は出来なかった。
友達に誘われてイベントサークルにも入った。
合コンにも参加した。
何人かに誘われたり、付き合って欲しいと言われたこともある。
でも、どこか私の中に、彬良のことがわだかまりとなって残っていて、前に踏み出すことが出来なかった。

誰かと付き合って、突然、素っ気ない態度を取られたらどうしよう?
好きになってから、やっぱり他の子を好きになったって言われたら?
目の前を、私じゃない子と腕を組んで歩いてるのを見ちゃったらどうしよう?

ネガティブなことばかり考えてしまって…。

それ程、やっぱりショックだったのだ。
彬良と女の子のツーショットは…。



父が亡くなった時、久しぶりに彬良と会った。
高校時代と違って少し前髪が伸びて、大人っぽくなっていた。身長も明らかに伸びていた。
前より素っ気ない態度。
でも、心底心配してくれているのは伝わってくる。
少し…いや、本当はすごく安心感を覚えた。

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