ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「灯里ちゃん、どっちの家にも行き来してたんだよね?別れ際、いつもキスしてなかった?
それ、みーんな、見られてたわよ?
お義父様やお義母さんだけじゃなく、
大学から実家を離れてた、修司さんまで見かけたって言ってたもの。修司さん、大きな休みくらいしか実家に帰ってなかったと思うわよ?」

マ、マジか⁉︎
全然気付いてなかったー‼︎

「わかるわよ〜。
若い時って周りが見えなくなってるから。
情熱的になっちゃうものよねぇ〜。」

「ちょ、ち、違います!
そんなんじゃないんです〜〜!
アレは、数学を教えてもらう、“お礼”だったんですよ!帰り際に“お礼”してたんです!」

あ、めっちゃ怪しんでる。
信じてないな、麗先生。

「さっきも言いましたけど、
私、昔から数字が苦手で。
それを彬良が知って、もったいないって。
センターの数学さえなんとかなったら、
K大行けるから、俺が教える!って。
ホント、彬良いいヤツなんです。」

あ、あれ?今度は呆れた顔してる…。

「…じゃあ、なんでK大を薦められたんだと思う?」

「あぁ、それは父がK大の教授だったからですよ〜。」
その答えなら簡単だ。

「違うでしょ!同じ大学に通いたいからに決まってるじゃない!」

へ?

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