チヤホヤされてますが童貞です

柔軟剤の香り

「明日はオフ?」
「ううん。午後から撮影」
「人気女優さんは多忙だね。この間の『ぶりっ子役』?『あざとい女子役』めちゃくちゃ上手だった。」
「……綾斗だって刑事ドラマの犯人役すごかった」

お互い新人とは言え仕事に忙殺されている。
演技力を認められるのは嬉しいことだが、実際のところ異性との撮影はNGが出ることもしばしば。

「今日もお題箱引こうか。」

先日、服部から渡された『異性慣れするためのお題箱』を手に取り、凛に手渡した。

「私が引いて良いの?」
「うん」

ガサゴソと小さく開けられた穴に手を入れ、手に吸い付くように纏わり付いた紙を一枚引いた。

「えっと……『ハグしながら会話』…だって…」
「うっ……」

2人してブワッと同時に顔が熱くなる。

「……引き直す…?」
「……ここで逃げたらダメな気がする…」

(私の方が年上なんだし…!リードしなきゃ!)

そう意気込んで椅子から立ち上がり、綾斗の方へと近寄った。
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