チヤホヤされてますが童貞です
(今日も働いた〜)

仕事のスケジュールを全て終え、帰宅した綾斗は大きな伸びをした。それだけで蓄積された疲労は少し和らぐのだから、言うほどハードではなかった本日の日程。

(凛、まだ帰ってきてないのかな?)

『仕事終わった!今から帰る〜』という連絡が入って1時間。自分よりも早く帰宅しているものだと思って帰ってきた綾斗にとって、部屋の静寂のお出迎えは少し物悲しい。

(……居ると思って帰ってきたからかな…。なんか…)

『おかえり!』と言って笑う凛の表情が脳裏に焼き付いている。寂しさが際立つような心情は、最近、顔を合わせて話す機会がめっきり減ったせいで。

(……俺が…凛と…どうなりたいか…)

同居生活が終われば同じ事務所の同期に。
ドラマの撮影が終われば2人の関係はただの元共演者へと変わる。

「………嫌だな…」

ぽつりと呟くと、その声は静かな部屋に溶けてなくなった。
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