チヤホヤされてますが童貞です
そして15分後。

「……お風呂、あがったよ」
「っ……」

出てきた凛の身に纏うのはバスタオル一枚。完全に乾かしたサラサラなロングストレートに心をくすぐられる。

「なっ…なんでそんな格好…」
「……忘れてる…? 明日、休みじゃん。」
「……そうやって俺のことドキドキさせて楽しんでるの…知ってるんだからな…?」
「別にそんなんじゃ…」

この時の凛の心境は、『ゆっくりじっくり脱がされるのが恥ずかしい』というもので、どうせ見られるなら最初からバスタオル一枚でも平気だろう、と推察しての格好である。

「……最近、俺の反応見てニヤニヤしてるくせに」
「うっ……だって可愛いんだもん…」
「ほら、遊んでる」

余裕がなくなって激しく求めてしまうことからの逃亡として用いた綾斗の演技。それに乗っかった凛の演技は、綾斗の『好き』という気持ちを丸裸にして余裕ない様子に誘うためだけに用いた遊び心の演技だった。

「綾斗もお風呂どうぞ。」
「うん。……俺の部屋で待ってて」
「………はい…」

色っぽい耳元の囁きで、『これからするんだ』という擽ったい気づきが押し寄せてきた。いつの間にか取り繕った仮面は外れていて、カァーッと顔に熱がこみ上げてくる。


お風呂に向かう綾斗の背中を見送ると、言われるがまま凛は綾斗の部屋へと足を運んだ。ずっと立ってるのも変なので、とりあえずベッドに腰掛けると鼓動が強く跳ねる。
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