弟にしないで。

「桃奈さん、はい、カーディガン。匂いとか…気になるなら無理しないでくださいね。」

「ありがとう!お借りします!」

見ない方がいいんだろうけど、

桃奈さんがカーディガンを羽織る動き全てに目が奪われる。

…変態か。

自己嫌悪に走ってると、

「れいちゃん、ネクタイもつけていい?」

と聞かれる。

…すでにダボダボの格好で可愛い。

できるだけ、見ないようにして、

ネクタイをまたロッカーから引っ張り出して、渡す。

すると、

「れいちゃんつけてもらっても…?」

「え?」

恥ずかしそうに桃奈さんがいう。

「あの、いつもマネキン相手とかはるちゃん相手にネクタイ結ぶことはできるんだけどっ…自分のができなくて…」

え。

なにそれ、遥羨ましい。

「今日のはどうしたんですか。」

「うちの学校、リボンもあるから大体はるちゃんにお願いできそうにない時はリボンなんだけど、今日は綾が結んでくれて…お恥ずかしい…」

三年間そうやって凌いでいたと思うと、

天然人たらしのこの人らしいというか、なんというか。

でも俺も人の結んだことないんだけど。

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