好きになってもいいですか?
あの、容姿端麗で、クラスの人気者で、誰にでも優しくて......。

《まぁ、顔立ちがあれだけ整ってて綺麗なんだもん。似合ってて当然だよね?》

上杉くんが去ってから、私はもう一冊同じマンガの本を手に取って会計を済ませ、言われた通りに外で彼を待つ。

今日発売の少女マンガ。

忘れるところだったが、初めは彼もこのマンガに手を伸ばしていたのだ。買おうとしていたのだろう。

《誰かに頼まれたのかな? でも、何で女装? ......趣味?》

一人になると、どうしても疑問ばかりが浮かんできてしまっていた。

どれくらいそうしていただろう。不意に肩をトントンと叩かれた。振り向くと、メイクを落としてウィッグを取り、ニットではなく厚手のシャツを着た上杉くんが立っている。

そう言えば初めてだ。

上杉くんの私服姿を見るのは......。

ドキッと胸の鼓動が高鳴ってしまう。

《ふわぁ~、上杉くんがこんな近くに......》

不自然にならないよう、ゆっくりと視線を外す。


「驚かせちゃってごめんね。とりあえず、喫茶店にでも行こうか」

「は、はい!」

「ははっ、戸惑ってるのは分かってるけど俺達同い年なんだし、普通に話して良いよ」

「はい......あ、う、うん......」


これは一体どういう事なのだろうか。

入学してから挨拶しかしたことの無い上杉くんと休日に偶然会い、隣を歩いて会話をしている。
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太古の昔に存在していた吸血鬼。 その中で最も危険と称された男ーシュヴァイツは、吸血鬼の王であったアレンの息子であるデュランに死して尚も永き時に渡って封印されていた。 魂を封印から解き放たれてしまったが魂の断片として、ある日、16歳を迎えたばかりの騎士を目指す少女、リーファネル。 急に蘇ったシュヴァイツとしての記憶の欠片。 リーファネルは騎士になることを諦め、記憶の欠片を探す旅へと家を出る。 そして、冒険者として生計を立てながら旅を続けていた。 そして、ある日出逢った少年ーディアス。 彼もまたリーファネルと旅をすることで、自分がデュランの生まれ変わりだと知る。 その時に頭の中に現れたデュランから告げられた言葉は...... シュヴァイツに意識を乗っ取られるようならリーファネルを殺せ というもの。 残酷な言葉に否定しながらも旅を続けていく内、リーファネルに惹かれている自分に気付く。 リーファネルとディアス。 運命とも呼ぶべき出逢いの中、二人の導き出す答えとは!? 切ないようで甘い。それでいて残酷なダークファンタジー。 笑えるような場面も描いてます。 自身初の転生ダークファンタジー! 必見です。

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