離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
耳を抑えながら振り向けば、いつのまにか帰って来ていた瀬名社長が真後ろに立っている。
「うわって。酷くないか?」
口元に拳を当てて、笑い出すのをこらえるように肩を揺らして言った。
「すみませんびっくりして……ってびっくりしますよ普通!」
まだぞわぞわの感覚が残る耳をつい手でごしごしと擦ってしまう。わざとじゃなかったのだが、彼は眉尻を下げてちょっと情けない表情を浮かべた。
「そこまで嫌がらなくても」
「そういうわけでは……おかえりなさいませ、社長」
さすがにちょっとあんまりな態度だったか。コホンと咳払いをひとつして、背筋を伸ばした。
「ただいま。もしかして、待ってたのか?」
彼の目が、自分の腕時計を見て時間を見る。そう、終業の六時をもう一時間以上過ぎていて、オフィスに残っているのは私と滝沢さんのふたりだけだった。
「今日中にしておきたい仕事もあったので。ですが、もう残りは後日に回します」
あともうちょっとだったが、明日の朝にやってもすぐに終わるだろうと、今日はここまでにしておくことにする。