離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
春の終わり、日中は初夏の暑さに襲われる。といっても、今日は若干曇り空でそれほどでもないだろう。日傘は置いていくことにした。もし暑くなっても私ひとり差すわけにもいかない。
履きなれたデニムのパンツに、白の襟付きのシャツを合わせる。前上がりになっていてベルトが覗くのが可愛い。小さめのショルダーバッグにスマートフォンと財布とハンカチ。歩き回ることを考えて、足元はスニーカーにしておいた。
彼は、春らしい薄いブルーのデニムと白のノーカラーシャツ。襟ぐりが少し広めで、さらにボタンをひとつ外し休日らしいラフな雰囲気になっている。その上から、アースカラーの薄いジャケットを合わせていた。
細身のジーパンが、余計にそう見せるのだろうか。足が長すぎて、辛い。隣に並ぶのが。
「……ああ、スニーカーだからか」
駅まで歩いている途中、彼が私の顔を見てそれから足元を見て、また顔に戻るというのを二度繰り返してからそう言った。
「何がですか?」
「いつもより、小さく見えた」
ふっと笑った顔も、やはり仕事中には見ることのない、ラフなものだ。近頃、この顔を見ることが多くなったと思うのは、仕事以外での時間を共有することが少しずつ増えているからだろう。
「いつもはパンプスなので」
気恥ずかしさに、勝手に視線が逸れてしまった。自分の足元を見て、ベージュに黒で花の刺繍が入った側面を彼に見せるように傾ける。
「可愛いんです。気に入ってて。この春のお気に入りです」
話を靴に向ければその気恥ずかしさも消えるかと思ったのに。
「ああ、可愛いな」
「……はい」
全然消えてくれない。