暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
「……え、しかし……」
「俺の通る道に出たのが悪い。子供だろうが大人だろうが、ただの平民なら何の問題ない。いくらでも、もみ消せる」
その言葉に、当然御者は戸惑う。
それを見かねた男性は痺れを切らし、護衛に当たっていた周りの者へ声をかけた。
「その子供を切れ」
「かしこまりました」
その一言で男達は幼い子供へ向かって歩き出す。
手には長く鋭い剣が握られてある。
その光景を見ていた全員が恐怖に顔を引きつらせた。
誰か…っ。
辺りを見渡す。
しかし、誰も動こうとしない。
見ているであろうその子の両親でさえも。
……皆命が惜しいに決まっている。それは、当たり前の事だけど…。
このままだと、あの子の命が危ない。
汗ばむ拳をギュッと握りしめる。
……一か八か。
「アニ様、何を…っ!?」
傍観する人々をかき分け、前へ走る。
「何だ、お前は」
「邪魔する気なら、お前も切るぞ」
体格の良い男が目の前で剣をギラつかせる。
本当は怖い。
けれど、ここを退く事なんて出来ない。
何故なら、この場でこの子を助ける事が出来るのは、もしかすると私だけかもしれないから。