【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

重苦しい沈黙が包む。それを打ち破ったのもまた大地だった。

「ハァー?!今時何言っちゃってるの?お父さん頭大丈夫?
良家とか何それ。悪いけど俺は春香以外と結婚するつもりはないんだけど。
お見合いとか政略結婚なんて今時流行んないって。ばっからしいなぁー。お母さんも本気そんな事考えてるの?」

「私はお父さんの言う通りにするのがいいと思うけれど」

母はいつもにこにこと笑い、決して父の意見に反対するような人ではなかった。

私は何も言えずに父と大地の押し問答を聞いていた。

「大地はまだまだ世間の事を知らなすぎる。大人になれば分かる事情というものがある」

「いや分かんねぇし。
つーかねーちゃんマジでそれでいいの?」

大地の真っ直ぐな視線が痛い。

父の手前、その問いかけに曖昧に笑う事しか出来なかった。



どうして同じように育ってきて大地のようにはっきりと物事を言えないのだろう。

性格の問題?そんな訳ない。私はどちらかといえば物事をはっきりと言うし、自分の想いは相手へと直ぐに伝える。

けれど父の前になるとどうしても委縮してしまい、自分の思っている事が言えなくなるんだ。何故かは分からない。

父が嫌いな訳ではない。寧ろ好きなんだ。好きだからこそ、父の言葉は私の中で’絶対’なのだ。



何故か大倉さんという方と会う日にちまで強引に決められて、私の想いとは裏腹に話は勝手に進められていく。

大地は途中からは何も言わなくなったが、最後まで不満そうに話を聞いていた。


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