私に恋する可能性




しばらく人混みの中を歩き、やっとのことで開けた場所に出た

息が吸えたって感じ


「多岐くん…ごめんね。はぐれたりして」


「いや俺も不注意だったよ」


あ、足が…痛い泣


自分の足を見下ろす

指の間、下駄の紐のようなものが当たってる場所に血が滲んでいる

ひえぇぇ


「…来て」


へ?


ぐん


再び手を引っ張られる


え、今度はどこに行くんだ



多岐くんが力の入れている手

私も握り返していいのかな…


……

いや…

やめておこう



「座って」


手を引かれて連れてこられたのは待ち合わせした駅の前のベンチ

よくわからず座る


「うわー結構ひどいねー痛そ」




私の足をひょいと持ち上げて苦い顔をした


「あああすみません!見苦しいものを!」


思わず足を隠すように縮こまる


「いいから足貸して」


えー…


あとで返してくださいね

恐る恐る足を伸ばす


慣れない下駄の跡がついた自分の足


「絆創膏?」


多岐くんが手に持っていたのは絆創膏だ

え、女子力高くない?


「的場達と会った時もらったんだよ」


的場くん達?


え、それ結構前じゃない?


「な、なんで」


「…靴ずれし始めてたから」


…へ?私が?


「花火見てから渡そうと思ってすっかり忘れてた。茂木に言われて思い出したんだけど…ごめん」


私の足に絆創膏を貼る多岐くん


下を向いているから表情が見えない





的場くん達と会った時ってことは…


私よりも先に気づいてたんだ


わざわざ私のためにこの絆創膏を貰ってくれたってこと?




……どうしよう


めちゃめちゃ嬉しい


嬉しすぎて…変になりそう



「だから俺は…茂木より先に気づいてたよ」


…え?


「茂木より早く…わかってた」



ものすごい小さな声でボソッと言った

だけど私の耳にはちゃんと聞こえた

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