私に恋する可能性



そこでなぜか言葉が止まった


巻き髪の子の目が大きくなっている


「遥…?」





「俺関係でもめてる感じ?」


!?

すぐ後ろからそんな声が聞こえて思わずビクッとする


振り向くと、私の真後ろに多岐くんの姿


衣装なのか黒いエプロンを腰に巻いて、ベストのようなものを着ている

首元のネクタイがその魅力をさらに磨く

そういえば蓮斗くんも似たような格好してたな



「何があったの?」


多岐くんが私の顔を覗き込む

何があったって…


多岐くんが来たことで大勢の視線が集まる中

戸惑う私をよそめに巻き髪の子が私と多岐くんの間に入った


「なんでもないよー!ねー遥!それより私と…


「俺はひなたに聞いるてんだけど」


っ!

多岐くんのいつもより低い声がそれを遮った


珍しい声色に巻き髪の子をはじめクラス中が固まる


「遥…?」


た、多岐くん?


少し口角は上がっているけど目は笑ってない

いつもより細い目で私の前の巻き髪の子を睨みつけるように見据える


「彼氏の前で彼女のこと悪く言うのやめてくれる?」




多岐くんの、彼女ってワードを強調した言い方に胸が鳴る

聞いてたんだ…


私の勘違いかもしれないけど

自称彼女なんかじゃないって…言ってくれてるように感じてしまった


動かない巻き髪の子ににっこり微笑んだ多岐くん


「あとさーひなたを好きになるかどうかは俺が決めることだから部外者が口出す必要ないよね」


その笑顔がめちゃんこ恐ろしく感じた


「ひなた」


へ!?


うあ!



うんぬん言う暇もなく、いきなり手を掴まれたと思ったら引っ張られる


フリーズ状態の人たちに見送られながら退場

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