私に恋する可能性



そのあと蓮斗くんは多岐くんに促され

そそくさと帰って行ってしまった


蓮斗くん、多岐くんのこと嫌いだって言ってたけど…

そこもちょっとは変わったかな?

だったらいいな


「ひなたー?」


ん?


「いつまで茂木のこと考えてんの?」



「こっち見て」


いや見てる

めっちゃ見てる


多岐くんに抱きしめられた状態のまま硬直する


「違う、顔」




多岐くんのブレザーを目の前にしていた私の顔をくいっと上げた


「っ」

「なんで逃げたの?昨日」



「それは…」

「俺結構傷ついたんだけど」

「す、すみません」

「嫌だった?」



「そんなことない!」


思ったより声が響いてしまった

かあああっと赤くなる


「ふふ、そっか。ならいいけど」

「…いっぱいいっぱいになっちゃったの」


いろんな気持ちがごちゃごちゃになってしまったから


「馬鹿なひなたでもわかりやすいように簡単に言ってあげたのに?」


ぬぁ!?


「馬鹿って言った!」

「ふふふ」

含んだように笑みを溢す


「じゃあ、馬鹿なひなたが理解できるまで何度でも言ってあげるよ」


多岐くんの綺麗な顔が近づいた


私の視界いっぱいに広がる大好きな人


「好きだよ、ひなた」


っ!


「勘違いじゃない、本気で惚れてる」


多岐くんのいつになく真面目な表情に心臓がえぐられるほどにうるさくなる

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