翼のない鳥
できるだけことを荒げたくない。
真秀たちを刺激しないよう、穏やかさを意識して微笑んだ。
そこで目が合って―――気付いた。
なんだ、これ。
すごく、変なかんじだ。
目が、彼の目が、無機質なもののように見えて、奇妙な感覚に陥る。
ほんとうに、よくできた人形と対峙しているような気分。
美鶴を見ていた彼の目のは確かに温かさがあったのに、今はなにもない。
文字通り、温度のない瞳。
温かみはもちろん、冷たさも感じない。
感情のない、瞳。
宝石のような彼の蒼の瞳が、少し不気味だ。
「僕はさっき、決定事項と言った。一応確認しておく。」
そこで一息ついて、彼の瞳に初めて感情が加わった。
鋭さの増した瞳が移した感情は―――張り詰めたような、緊張、焦り。
義務感とか、使命感のようなものを感じた。
「お前たちのほうから美鶴を突き放してくれないか。そして金輪際、美鶴と関わるな。」
「ハッ・・・っ!」
「鳴宮。」
今にもつかみかかりそうだった真秀を止めたのは、柊羽。
2人はいわゆる犬猿の仲ってやつだけど、俺としては良いコンビだと思ってる。
熱くなりやすい真秀と、ストッパーの柊羽。
相性が悪いと思われがちだけど、喧嘩するほど仲がいいってやつだと思うんだよな。
その証拠に、真秀も不服そうながらも一旦ひいた。
他のメンバーも、言いたいことはあるだろうに黙って見ている。
なぜなら、この場で意見を代表して伝える役目にあるのは―――
「断る。」
俺、だからだ。