愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~



週末。
涼介さんの仕事が休みなので、少し寝坊してゆっくりと朝を迎え、遅めの朝食を食べた後。


「菜緒、今日の調子はどう?」


八週を迎え、まだまだつわりは治まりそうな気配はない。


「うん、いつも通りかな」


今朝は雑穀米のおむすびとバナナを食べた。
食べれる種類が少なくても栄養が摂れるように、インターネットで調べたサプリメントもきちんと飲んでいる。


「少し出かけられる?」


広げていた新聞を畳んだ涼介さんが、穏やかに微笑んだ。
外は天気がよく、風も心地よさそうだ。


「散歩? 行く行く」


私は寝室に行き、クローゼットの中から帽子を取り出してかぶった。
つわりによる頭痛は肩こりや偏頭痛が原因のひとつだそうなので、散歩をして体を動かすのはいいみたい。


「散歩じゃないんだけど」


日焼け止め対策万全で再びリビングに姿を現した私に、涼介さんは吹き出しながら言った。


「そうなの? じゃあどこに……」
「毛利亭」


片眉をピクリと上げ、涼介さんは意味ありげに言った。

母や美弥子さんはときどきマンションに来てくれるので会っているけれど、久しぶりに仕事仲間や兄、父に会うのも気分転換になっていいかもしれない。

涼介さんが運転する車に乗り、楽しみな気分で毛利亭に向かった。
途中、空腹だと吐き気が強くなるので、持ってきたキャンディーを食べてやり過ごす。

到着した毛利亭はランチタイム中で、活気があって忙しそうだった。
約二週間振りなのに、すごく懐かしい気持ちになる。
厨房で煮炊きしている湯気や、窓から流れてくる庭の緑を多く含んだ風、古い家屋の匂いを胸に吸い込む。


「菜緒、いらっしゃい!」


玄関で母に迎えられた。


「体調はどう?」
「うーん、まあまあかな」
「無理しないで、疲れたらすぐに休むようにするのよ」
「はい」


母の言葉に素直に頷いて、案内されるまま廊下を歩く。
途中帳場や厨房に立ち寄って、兄や父にも顔を見せられた。
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