愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
タイミングよく現れて助けてくれたのが信じられなくて、放心状態の私の手を取ると、月島くんは甲にチュッと口づけをした。
それがあまりにも自然な仕草だったから、振り払う暇なんてなかった。

いや、振り払いたくなる嫌悪感を、月島くんにはまったく抱かない。


「でも、さっきの男に共感したな」
「へ?」
「毛利さんが一番輝いてる。ここにいる人の中で」


どうしてこんなにも、気障な台詞をサクッと言えちゃうんだろう。
ドキンと撃ち抜かれたように、心臓がギュッと収縮した。

男性に慣れてない私をうろたえさせるなんて、月島くんには容易いかもしれないけれど、これじゃあ私は心臓がいくつあっても足りない。


「ありがとう……。月島くんが来てくれてよかった。助かったし」


それに、うれしい。
なぜだかそう、素直に言えない自分がいる。


「帰るなら送って行くよ」
「あ、ちょっと待って」


先程まで出席者で混雑していた周囲は、帰宅したり二次会会場に移動したのかすっかり閑散としている。


「あのね、お見合いの返事、ちょっと待ってって言ったけど」
「うん……。あれはもういいんだ」


勇気を振り絞って切り出した私は、あっさりとそう告げられて拍子抜けした。

もういい、っていうのは、もう返事はいらないってこと?
運命を感じていると言ってくれたけど、もうあの言葉は有効ではないのだろうか。

なんだかちょっと残念だな、って思った。
もう会えないんだ。


「そ、そっか……」


奥歯を噛みしめながらも頑張って作った笑顔で、私はうつむいた。
すると、さっきキスされた手の甲に、温かいぬくもりを感じた。


「交際期間なんてすっとばして、俺と結婚しよう」


へ?
け、結婚?


「……え?」


掠れた声で聞き返す。
ゆっくりとたどるように顔を上げると、月島くんは包容力のある眼差しで私を見つめた。
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