愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「よかったら俺らと一緒に行かない?」
「いえ、あの、帰りますので」
「え! なんで⁉ そんな冷たくしないで一緒に行こうよ!」
「いやっ、離してもらえませんか?」


掴まれた腕を振り払おうとすると、男性はすでに披露宴でだいぶ飲んだのか、酔っているらしく赤ら顔をこちらに近づけてきた。


「式の間、君を見てかわいいなって思ってたんだ。出席者の中で君が一番目立ってたし!」


強いアルコールの匂いに嫌悪感が湧いてくる。
自分でも飲むけれど、他人の、特にこんなふうな自己中な人だと尚更気分が悪い。


「あの、行きませんので離してください!」


先程よりも強い口調で言い、腕を大げさに振った瞬間。


「――早く離してください」


聞き覚えのある声が頭上から届いた。
すっと伸びてきた手が、男性の手首を捻るように掴み上げる。

私が振っただけではびくともしなかった男性の手を引き剥がすような力だもの、相当強かったのだろう。
男性は悲鳴のような声で叫んだ。


「痛! なにすんだよ!」


目をつり上がらせた赤鬼のような形相で男性が相手を見る。
ほぼ同時に、私も真横に目をやった。


「つ、月島くん……⁉」


確認するまでのわずかな時間が、スローモーションに感じた。
男性の手をパッと離した月島くんは、目をむく私を見て硬い表情で頷いた。


「なに、って。彼女は私の連れです。汚い手で触らないでください」


そして殺気立った目で、掴まれた部分をさすっている男性を睨む。

舌打ちを残して男性が去ってゆくうしろ姿を、私はぼんやりとしたどこか夢見心地で見ていた。


「心配で来てみてよかった」


月島くんがため息交じりで言う。


「お酒、飲んでるんじゃないかと思って」
「あ……」
「まさか目の前でほかの男に連れ去られるなんて思わなかったから、さすがに焦った」

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