愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「あれ?」


駅に向かって歩き出そうとしたとき、路地に停まっている一台の車に気づいた。

見覚えのある白の高級車。
近づいて運転席を覗くと、気づいた涼介さんがニコッと笑って助手席を指さした。


「お疲れ様、菜緒」


ドアを開けた途端、爽やかな笑顔に心がキュンとする。


「どうしたの? 迎えに来てくれたの?」
「もう遅いし、心配で」
「わざわざごめんね」


助手席に乗り込みシートベルトを締めると、車が発進した。


「俺もちょうど今帰るところだったんだ」
「こんな時間まで仕事だったの?」
「今ちょっとバタバタしててね」
「忙しいのにどうもありがとう」
「今度建設するマンションについての会議が長引いてて。貴重な用地仕入れの数が少ないから、情報を精査するのに手間取っててね」
「そうなんだ……」


そういえば、藤井さんも抵当に入っている土地の話をしていた。


「マンション建設にぴったりな土地って、数少なくて貴重なんだ」
「うん、情報があれば飛びつきたいくらいだよ」
「そっか……」


毛利亭は古くから会合が行われていて、有力な情報が飛び交っている。
それはもちろん仲居として他言したりはしないけれど、耳には入る。

涼介さんが飛びつきたいくらいほしい情報を、私は手に入れられるかもしれない。

私のどこを好きになってくれたのか、全然わからなかったけれど。
もしかしたら涼介さんは、それを知っていて期待して、私と結婚したなんてことは……。


『毛利さん、仕事続けるの?』


あえて聞いてきたのは、辞められたら困るとか?

点と点が線でうっすらと結ばれたような気がして、心臓が早鐘を打つ。
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