愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「さっきは?」
「へ?」
「あいつになにかされた?」
両目を探るように見つめられ、私はさすがに観念した。
「手首を掴まれただけで……告白めいたことを言われた」
気まずくて目をそらすと、涼介さんは私の両手を握った。
「ちょっと待って、気持ちを鎮めるから」
そう言って、しばらくうつむいて深呼吸をした。
「俺、心が狭いよな」
項垂れるように私の肩に頭を預け、弱った声で続ける。
「菜緒が絡むと冷静じゃいられないんだ」
涼介さんの額に汗が滲んでいるのがわかった。
「急いで来てくれたの? どうして……」
手を離してため息をつき、スラックスのポケットから涼介さんがなにかを取り出す。
「車に落としてた」
「これっ、藤井さんからもらった……⁉」
涼介さんが取り出したのは、私が失くしたと思っていた手紙だった。
「ごめん。最初ただの紙切れかと思って、何気なく開いて勝手に読んでしまったんだ」
渋い顔つきで涼介さんが白状する。
「藤井さんと面識があるの?」
「いや、初めてだ」
「え……」
だったらなぜ藤井さんは涼介さんの顔を見て、すぐに月島不動産の専務だとわかったのだろう。
そんな私の疑問は、顔に出ていたのかもしれない。
「うちは直接取引してないけれど、たぶん俺の顔は結構世間に知られてるのかもしれない。専務に就任したとき、いくつかインタビューを受けたし」
「そうなんだ」
周到な涼介さんの説明に、私はただただ納得した。