愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~



翌日、朝のニュースの天気予報で、梅雨が明けたようだと耳にした。
一気に気温が上昇し、真夏のような暑さの日。

ランチタイムの毛利亭では貸し切りで、手踊りの発表会と交流会が行われていた。
大広間のお座敷には、会席料理が次々に運ばれる。


「菜緒、ドリンクの追加を運んでちょうだい」
「はい」


私は母から受け取った飲み物をお盆に乗せると、急いでお座敷に戻った。
お客様にそれぞれオーダーされたものを配り、料理の減り具合を厨房に伝える。

お座敷は窓を開けていて風が入ってくるけれど、急に真夏の気温になったし、お客様の人数が多いので熱気で息が苦しくなる。


「はあ、は……」


視界が左右に揺れるような感覚に襲われ、私は両足を踏ん張った。

目の前に黒い影がかかり、ヤバい、倒れると思った瞬間。
全身から力が抜け、私は膝から床に崩れ落ちた。


「ちょっと、菜緒⁉」


床に体を叩き付けられた音に気づいた母や、近くにいた仲居が駆け寄って来る。
バラバラの足音が耳に響いた。


「菜緒! 大丈夫⁉」


母の声が霞がかった遠くの方で、壊れたマイクのように膨張して聞こえた。

呼吸が浅くて息苦しい。
頭と顔は熱いのに、全身から血の気が引いたような寒気がした。


「菜緒!」


私を呼ぶ母の声が、頭の奥でエコーしていた。
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