愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「けど、毛利さんだってそうでしょ? 老舗料亭のお嬢様だもの、結婚したいって男はたくさんいるんじゃない?」
「いやいや、私はそんな……」


顔の前で両手をブンブン振ったとき、「失礼いたします」ゆっくりと引き戸が開いた。


「お食事をお持ちいたしました」


美弥子さんが御膳を運んできたので、会話は一旦中断した。
海の幸ランチのメニューは、のどぐろの姿焼き、鯛のお造り、海老の天ぷらなど。


「いただきます」


すっと背筋を伸ばした月島くんに倣い、「いただきます」私も手を合わせた。

さすが月島不動産の御曹司の月島くんは、食べ方がとても綺麗だ。
懐紙をジャケットのポケットからサッと取り出し、食べ終わった魚の骨の上に被せる。その行動に、育ちのよさが現れていた。

食事をしながらお互いの仕事の話をした。
月島くんは今、専務取締役という役職なのだそうだ。具体的にどんな仕事をするのかよくわからないけれど、責任感のあるとても重要な立場なことはわかる。


「敷かれたレールだからね。最年少でなったから、取締役会で反発がないように必死で仕事してるよ」


月島くんは謙遜したような言い方をしたけれど、月島不動産は今、駅前の再開発事業で目玉となる高層ビルをオープンさせる準備で忙しいらしい。
地上四十階建ての商業店舗とオフィスの融合施設で、誰もが知るそんなに大きな仕事に携わっているなんてすごいと思う。

それに、月島不動産が同族経営が当たり前という方針だとしても、やはり優秀でなければ息子を専務取締役には抜擢しないだろう。


「楽しみだね。オープンしたら行ってみたいな」


私が感心しながら言うと、月島くんとぱちんと目が合った。


「ぜひぜひ。俺が案内するよ」


ニコッと微笑み、小首を傾げる。
その何気ない仕草がカッコよくて、私は亀みたいに首をすくめた。

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