泡沫夢幻
業務を終え、店から出る頃には雲の切れ間から太陽が顔を覗かせ、振り向けば大きな虹がかかっていた。
ある人は脳裏に、またある人はカメラにおさめる。
商店街に差し掛かると朝とは違う女の子たちの威勢のいい声が飛び交っていた。
「明日17時から前夜祭ステージ出演します!」
「お願いしまーす!ぜひきてください!」
女の子たちからビラを手渡され素直にそれを受け取る。
帰って捨てよう。なんて考えながら歩いていると
「あ、常盤くん?」
と聞き慣れた声が聞こえてきた。
ビラをよく見てみると声の主である水瀬の通う声楽団の名前が書かれていて、
もう1度常盤くん!と名前を呼んだ彼女はこちらへ駆けて来た。
「明日、用事ある…?」
そう俺の手にあるビラを指差しながら上目遣いで首を傾げて問う。
よかったら来てほしいな、なんて呟いて。
「あ、これ水瀬出るの?じゃあ行くよ」
どうせ暇だし、と付け加えて頷く。
「やった、楽しみにしててね?」
ぱぁっと向日葵のような眩しい笑顔でばいばーいと手を振る彼女が先程までいた定位置と思われる場所へ向かうのを見送る。
家に帰ると「明日、終わったら少し話したいな」と水瀬からメッセージが来ていた。
この前買った鉢植えの月下美人に1つ、蕾ができていた。