寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

それは二週間前のこと。
都心に近付き電車内は満員になったある日の朝。

その人の席の前に、六十代くらいの女性が座れずに立っていたことがある。

近くに座っていた雪乃は席を譲ろうかと考えたが、それほど高齢とは見受けられない女性に表だって譲っては迷惑かも、と悩ましくなり動けなかった。

誰か気づいて譲ってくれたら。いやでも、それなら自分が率先して動くべき。……でも、もし迷惑だったら。
ぐるぐると迷っているうちに時間が過ぎていく。

しかしその心配は杞憂に終わった。
ちょうどそのコートの男性が電車を降りたことで、女性は無事にその席に座れたのだ。

雪乃はホッと胸を撫で下ろし、スッキリとした気持ちでそれから二駅先の目的地で降車した。が、そこで目撃する。

先ほど前の駅で降りたはずの男性が、別の車両から降りてきたのだ。
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