寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

恋愛と言っても、実際は、雪乃が一方的に憧れを抱いているに過ぎないほんの小さな恋だった。わざわざ皆子に話すことのない密やかなもの。

しかしその憧れの人のおかげで、彼女は毎日小さな幸せを感じていた。

その憧れの人との共通点は、〝駅〟にある。

雪乃の自宅から最寄り駅までは、徒歩八分。
朝の出勤の時間、その人は必ずその駅にいて、同じ電車を待っているのだ。

男性は少し目を引くくらいに背の高いスーツ姿で、雪乃と同じく眼鏡とマスクをしている。素顔が見えない謎めいた男性だ。

おまけに最初に見かけた秋からずっと丈の長いコートを着ているため、背の高さ以外にスタイルの良し悪しも分からない。
まさに、雪乃と同じ、完全防備を貫いている。

毎朝いるその人を雪乃が意識し始めたのは、ふとしたきっかけだった。
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