寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
嘘のない眼差しにやられ、晴久の重心は下へ下へと落ちていく。
緊張しつつも彼女は何も考えずに口走っているわけではない、それが分かった晴久は、腕の力を緩めて肘をつき、至近距離で尋ねる。
「本当にいいの?」
「……はい」
ぶつかる息に熱が帯び、ひりひりと痺れた。
ここまで言わせたら、今度はなにもしないわけにはいかない。
両手を握って押さえてみても嫌がる素振りのない雪乃に、ついに顔を落とし、ゆっくりと口づけた。
「……震えてる」
口づけはすぐに終わる。
「すみません……」
晴久は離した後、もしかしてキスも初めてだった?と尋ねることはしなかった。
聞かずとも、おそらくそうだという手応えがあった。
それにこれ以上興奮させられると、手加減ができなくなる。
女性不信になる前はそれなりに経験があった晴久も、それがなくなってもう五年。女性を抱くのは本当に久しぶりなのだ。
それも自分好みの素顔、男なら誰でも触れたくなるような体、しかも今夜が初めてという初心な雪乃を目の前にすると、まるで盛りのついた狼のような気分になる。