寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
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翌朝、雪乃は一度自宅アパートへ戻った。
お洒落をするために十分な道具を持ってきておらず、自宅の化粧品やヘアーアイロンを使うためである。
一緒に来てくれるという晴久の申し出は断った。
きちんと気合いを入れてお洒落をするのは友人の結婚式のときくらいで、慣れないことには時間がかかる。
慌てながら準備をする様子を彼には見せたくなかったのだ。
服は着る機会のなかった白のワンピースに、こちらも使っていなかったアイスブルーのノーカラーコート。
今の季節にも、彼女の名前にもよく合う。
巻き髪にしても良かったが、あまり変わりすぎても恥ずかしいため毛先を内側に揃える程度に整えた。
出来上がった自分を鏡で見て、雪乃はほんのりと赤くなる。
お洒落自体が久しぶりなのもあるが、ここ数日で少しだけ綺麗になっている気がした。
肌ツヤもいいし、笑顔が自然に見える。
もしそうだとしたらそれは毎日あの晴久に愛されているからだろうと考えると、夜の情熱的な彼を思い出し、雪乃は頬を押さえた。
(私、こんなに幸せでいいのかな……)
十年間、手に入らなかった幸せを一気に手に入れ、しかも相手は運命的とも言えるほどに理想の人。大人の階段も登ってしまった。
これからデートに出かける自分は、今までとはまるで別人のように感じた。