寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
その後、シアター内はすぐに暗くなった。
手もとすら見えない暗闇に包まれたが、雪乃は驚くほど平気な様子である。
(晴久さんが隣にいると、全然怖くない……)
それでも晴久が手を握って「大丈夫?」と尋ねてきたため、雪乃は笑顔でうなずいた。
冒頭のコマーシャルが始まると、雪乃はその迫力に驚いた。高校生以来の映画館の臨場感。飲み込まれそうで緊張するが、やがてそれはワクワクに変わっていく。
素直に「わっ」「すごい」と声を漏らしている雪乃に、晴久は「まだ始まってないよ」と小声で笑いかけた。
「ふふ」
「どうしたの?」
「……すごく楽しいです」
「だからまだ始まってないって」
クスクスと笑いながら肩でつつき合い、まるで学生カップルのようにはしゃいでいた。