寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
午後三時の上映時刻までショッピングモールを歩いた後、同じ敷地内にあるシネマシアターへ。
ウィンドウショッピングの間にすっかり慣れた雪乃は晴久と腕を組み、携帯のディスプレイをかざしてチケットを発券した。
晴久はその足でフードドリンクコーナーに並び、雪乃に「なにがいい?」とささやき、彼女は素直にチュロスとアイスティーを買ってもらう。
上映開始まであと十分のところで早めにシアターに入ると、中心から右後ろほどに位置する座席に座った。
シアター内が明るいうちに入ろうという晴久の気遣いのおかげで、雪乃は開始までリラックスできた。
「ひと口ちょうだい」
晴久が顔を雪乃のチュロスに寄せた。
彼女はご機嫌で「はい」と食べかけのチュロスを彼の口に入れる。
「これ何の味?」
「シナモンですよ。苦手ですか?」
「いや、美味しい」
至近距離で視線が絡み、じっと見つめ合う。
晴久が先に笑みを落とし、「まだ明るいから駄目だな」となにかを予感させる冗談を言うと、雪乃は苦手なはずの暗闇がほんの少し待ち遠しくなった。