寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
数メートル先にコンビニや居酒屋ののれんが見えるだけで、特にデートスポットらしきものはなにもない。
本当にただの住宅地で、時折住人が歩いているだけ。
もう一度晴久の顔を見上げるが、彼は歩道の途中で立ち止まり、前後に目を向けているだけだった。なにかを待っている。
(なんだろう。……晴久さん、なにを待っているの?)
雪乃が夢中で掴んでいる晴久の腕。彼はその腕をゆっくりと持ち上げ、手首を目の前に持っていき、腕時計を見た。
「時間だ、雪乃」
「え?」
晴久は顔を上げた。雪乃もそれにならい、周囲へと視線を向ける。
するとその瞬間、鬱蒼としていた並木に次々と青い光が灯り出した。
「わっ……!」
海の波のように、青い粒の煌めきが手前から奥の並木へと一瞬で広がっていく。
道の両端に並ぶすべての枯れ木が青い光に変わると、辺りは幻想的な空間に包まれた。