寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
彼女のアパートへ向かう前に、駅のロータリーでもう一度電話をかけてみる。
(……出ない)
絶望的な気分になりながらフラフラと駅から歩きだした。
ときどきすれ違う人が顔を覗き込んでくる。彼は相変わらず夢中でそれどころではなく、素顔を晒していると気付かなかった。
アパートが見えてきたところで、電話ではなく彼女からメッセージが来た。手に持っていたスマホが震え、晴久はすぐに確認する。
【すみません。お風呂に入っていて出られませんでした。なにかありました?】
きちんと返事をもらえてとりあえず安堵した。本当にお風呂で気付かなかっただけなのでは、そんなかすかな希望を取り戻す。
ここで電話をかけ直してもよかったが、まるで急かしているようでよくないと判断し、同じくメッセージを返す。
【様子が気になったから話したいんだけど、会えないかな】
送信を押すとちょうど彼女のアパートに到着し、エントランス近くで返事を待った。許可がもらえたらすぐにここにいると伝えるつもりである。
返事は一分後にきた。
【会うのは難しいのです。すみません。電話でもいいですか?】
(なんで!?)