寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
雪乃はガラス戸の内側のオフィスで、皆子と始業準備を始めた。
「めちゃくちゃ集まってるよ、雪乃ちゃん。男ってやーねー」
「いいんです。今まで不自然に隠していた私も悪いんですから」
雪乃は至って冷静。
皆子の煽りには相槌をうちながらも、不安がる様子はない。男たちの歓声が聞こえないかのように、まったく気にせずに手だけを動かしていた。
「でも、本当にいいの?」
「なにがですか?」
「もうすぐ、他の皆が出勤してくるよ。岩瀬さんとかも。写真が回ってる人には、高杉課長のツーショットの彼女が雪乃ちゃんだってバレちゃうじゃん」
「いいんです」
雪乃はうなずいた。ふとガラス戸の方へ目をやると、そこには男たちの群れから一歩引いたところで心配そうにこちらを見ている晴久がいた。
(晴久さん……)
雪乃は彼に微笑みかけるようにアイコンタクトをとり、目の前の皆子に答える。
「もう隠す必要ないんです。私の顔も、プライベートも。全部守ってくれる人ができたので」
吹っ切れた彼女の清々しい表情に、皆子は「あら」と頬を赤らめ、もう過去のトラウマを払拭している雪乃に安堵した。