寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「女子の後輩から例の写真見せられてさ。最近知ったんだ」
「ええと……。はい……お付き合いしていますが……」
伊川は目を細め、それを切なさげに流した。芝居がかっているが雪乃は気づかず「伊川さん?」と優しく声をかける。
「……実は俺、高杉課長のことで悩んでるんだよね」
「え?」
「同期だけど職位が違うから、けっこうキツい態度とられるようになってさ。目の敵にされてるっていうか」
「ええ!?」
雪乃は誰かを目の敵にしている晴久が想像できず、目を開いて驚いた。
伊川の話には半信半疑でいるものの、晴久が悪く言われている事実には胸が痛み、表情が曇っていく。
「だからもしよければ、細川さんに課長のことをいろいろ相談に乗ってもらえると助かるんだけど……少し時間ないかな? あそこでいいから」
伊川は百メートルほどの距離にあるファミレスの看板を指差した。