寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「ええ。昨夜はご馳走さまでした。いろいろとお話ができて楽しかったです」
「いやあ……失礼なことばかり喋ってしまって申し訳ないよ。言い訳になるけど、とても酔っていたからね……」
「失礼なんてありませんでしたよ。雪乃さんのような素敵なお嬢さんがいるんですから、心配するのは当然のことです」
まだ晴久の営業トークなのではないかと疑心暗鬼になっている父は、ちらっと雪乃に目をやる。口を尖らせている雪乃だが、父の心配する気持ちは理解しており、ため息をついた。
「お父さん。私、晴久さんがいなかったら今頃東京でつらい毎日を過ごしてたと思う。今はどこへでも行けるし、晴久さんは私の嫌がることは絶対しない人だから大丈夫」
雪乃は話しながら昨夜のことを思い出し、
「あと、お父さんの嫌がることも絶対しないし」
と付け加えた。
父が反省したところで一度場は落ち着き、お茶を淹れに席を立った母と入れ違いで、ダイニングに座る。
二日酔いがまだ残っており朝食は食べられないらしく、彼のテーブルにはなにも用意されない。
「あの、まだ僕からお伝えできていないことがあります。最近、雪乃さんは引っ越しをされたと思うのですが、ご連絡は来ましたか」
晴久が切り出すと、父「きたよ」とうなずき、キッチンの母も「そうね」と声を出す。
「その住所は、僕の家です。一緒に暮らしています」
父は「一緒に?」と眉をひそめる。
晴久は、やはり雪乃はここまで話していないのかと思い、隣でキョトンとしている彼女に、後でおしおきをしようと心に決めた。