寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
お手伝いをする雪乃の姿を見て、晴久はホッとした。東京では怯えて暮らし、晴久と出会うまで当たり前の日常が送れなかった彼女も、ここではすっかり安心した子供のような笑顔をしている。
つらい経験があっても、あたたかい家庭で育ったからこそ素直で優しい今の雪乃があるのだと彼女の両親に敬意をはらった。
サラダの添えられたジャムのトーストをご馳走になり、母親から雪乃の昔話をあれこれ聞いた。
そのたびに「やめてよお母さん」と制止する雪乃の声と、晴久のクスクスという笑い声が一階のリビングに和やかに溢れる。
「あ、お父さん」
ふと、母親が、ドアのすりガラスに映る陰に気付いて立ち上がった。晴久も振り返り、雪乃も「きたきた」と呆れた声を出す。
本人もリビングに入り、申し訳なさそうにポリポリと頭をかいた。
「おはようございます」
晴久は先にあいさつをする。
「お、おはよう……晴久くん、昨日はその……」
記憶はちゃんとあるらしく、父親は晴久と雪乃、どちらの顔色もうかがいながらうつむいている。