寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

「じゃあ、またお邪魔します。お世話になりました」

午前十一時、昼前に晴久たちは雪乃の実家から車を出した。

「ええ。またいらっしゃい。雪乃、晴久くんにご迷惑かけるんじゃないわよ」

「わ、わかってるよぉ。じゃあね」

出会ったときの緊張感は和らぎ、打ち解けた四人は手を振りながら、家と車が離れていくのをお互いに見守った。

両親が見えなくなってから、雪乃はバックミラーに手を振るのをやめて座り直す。

ちらっと晴久の表情を確認する。澄んだ顔で運転している彼。

「あの、晴久さん。ありがとうございました。うちの家族がご迷惑かけちゃいましたが、ずっと真摯に説得してくれて……」

「そんなことないよ。楽しかった」

雪乃のご両親への説明不足には問題ありだけどね、と心の中でたしなめる晴久。
しかし、今まで出来すぎた彼女の年下らしい部分をやっと見つけた晴久は、それさえもかわいらしく思った。
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