寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
同情をするとともに、晴久は彼女が暗闇だけではなく、男性も苦手であることをこのとき初めて知った。
思い返せば彼女は乗客に近づけなかったり、タクシーに乗れなかったりと、いくつかヒントはあったのだ。
そしてすぐに、その苦手なものに晴久自身も当てはまっていると気付く。
この状況は雪乃に無理強いをしてしまったのではないかと感じた晴久は、「すみません、知りませんでした」と素直に謝罪し、さらに念のため、十センチほど彼女と距離をとった。
「あ、いえ、ごめんなさい! そんなつもりではなくて……」
「電車でもいきなり声をかけてしまって、迷惑ではありませんでしたか」
「まさか! 高杉さんのことは怖くないですから」
雪乃は顔を赤くして弁解する。
なぜ自分のことは怖くないのか、晴久はまずそっちを疑問に思ったが、それならとりあえずよかったと、尋ねることはしなかった。