寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
皆子はため息をついた。
彼女は目の前の雪乃を観察する。
曇る眼鏡に当たる、長い睫毛。
マスクの隙間からわずかに見えるシャープな顎。皆子は上体をデスクに倒し、さらに下からも雪乃の素顔を覗いた。
そしてその整った造形に同性ながらポッと赤くなる。
「こんなに美人なのに……。本当に勿体ない。眼鏡とマスクのせいで、雪乃ちゃんのかわいさが九十パーセントカットされちゃってる」
皆子の褒め言葉に、雪乃は複雑な笑顔を浮かべた。
なぜなら、彼女は意図的にかわいさとやらをカットし、素顔を隠しているからだ。効果が出ているのならと安堵する反面、素顔を明かせないやりにくさも感じている。