寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

見送るためにエントランスまで来た晴久だが、雪乃にまた会いたい気持ちが抑えきれず、「細川さん」と彼女の手を握って引き留める。

「は、はい」

戸惑う雪乃を、手を離す代わりにじっと見つめた。

「もしまたこういうことがあったら、俺を呼んでもらって結構なので」

「えっ?」

「昨日はたまたま会社のトラブルで残業が長引きましたが、普段は七時頃には帰宅しています。事前に連絡をもらえればもっと早く帰ることもできますから。遅くなったときは遠慮しないで、呼んで下さい」

「高杉さん……」

見つめ合う瞳は、どんどん熱を帯びていく。

「心配なんです。細川さんのこと」

心配なのは嘘じゃない、これは下心ではないはずだと自分に言い聞かせながら、晴久は「ね?」と念を押した。

それに圧倒されながらも、雪乃は嬉しさを隠せずに「はい」と高いトーンの返事をする。

「じゃあ、また。連絡します」

「はい。私もします。本当にありがとうございました」
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