寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
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晴久は営業部と総務部の中間地点にあるフリースペースでコンビニの昼食をとり、フロアへ戻った。
ポケットには、その短い昼食中に女性社員から渡された手紙が入っている。
その人の想いが込もっていることを頭では理解しているつもりだが、拭いきれない嫌悪感が付きまとっていた。
「さっきの見ちゃいましたよ、高杉課長」
廊下で背後から声をかけてきたのは、彼の部下の小山。
晴久のひとつ年下の主任職で、課長の晴久を慕い子分のように付き従えている。
おそらく学生時代はハジけていたのではと予想できる、陽が当たるとキラキラとする茶髪が特徴的だ。
彼は晴久の懐を指差し、ニヤニヤと寄ってきた。
「なんだ小山」
面倒なやつに見られた、と晴久は顔を歪める。
「さっき手紙渡されてましたよね。確かあれは総務の岩瀬さん」
「知ってるのか」
「そりゃ知ってますよ。めちゃくちゃ美人で有名じゃないですか。そうかー、岩瀬さんも課長狙いでしたかー。ははーん」
小山は悔しそうな表情を作るが、なぜだが誇らしげである。
晴久は一応名前を覚えた。
渡されただけでまだ読んでいないが、渡してきたときの岩瀬の様子を思い出すと書かれている内容は容易に予想がつく。
その上で読む気が起きないのだ。
小山は試しに「見せてくださいよ」とお願いしてみるが、晴久はすぐに「ダメだ」と断った。