寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「課長、岩瀬さんでもナシなんですか?」
「誰でも、だ。社内でこういうことをする気はない。これだって受け取るつもりはなかったんだが、押し付けて行ってしまったから仕方なく持っているだけだ」
「もったいないなぁ……。課長のそれって、まだあの事件のこと気にしているんですか? 五年くらい前でしたっけ、課長が社内の女につけ回されて家まで入られたってやつ」
軽く掘り返してきた小山に、晴久は眉をひそめた。
小山はさらに続ける。
「女が全員そんなことするわけじゃないんですから、付き合ってみたらいいのに」
軽い言葉に一瞬カッと喉まで怒りが込み上げた晴久だが、この小山には全く悪気がないことは分かっており、腹を立てても仕方ないとため息をついた。
「……簡単に言うな」
今でも彼はふとしたときにフラッシュバックに悩まされている。
五年前、晴久が女性社員につけ回された事件。
『高杉さんすごいです。私も見習いますね』
『教えてくださりありがとうございます。さすが、高杉さんですね』
『高杉さん。私頑張りますから、これからもよろしくお願いします』
晴久にとっては普通の後輩だった。優秀で、話しやすく、仕事も頑張っていると目をかけていた。
しかし事件は突然起こった。
帰宅すると、部屋の中に彼女がいたのである。
『お帰りなさい高杉さん。合い鍵、作ったので入っちゃいました』
『どうして怒るんですか? 私たち付き合ってますよね? 高杉さん?』
『どうしてそんなひどいこと言うんです? 全部高杉さんのせいですよ』
そのときの後輩の狂った顔が、晴久の記憶にこびりついて離れない。