寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
雪乃は暗くなっていた気持ちはすっかり忘れて顔を上げ、晴久を不憫な目で見つめていた。
晴久は自身のトラウマ話が情けなくてたまらなくなり、彼女と入れ違いに視線を逸らす。
「あれから、女性と上手く関わることができません。会社以外では顔を隠しているのも、一旦カフェに寄ってから出社するのも、会社の人間に自分の情報を悟られないためです。引っ越した今の自宅を知られたくなくて」
思い詰めた様子の晴久が心配になり、今度は雪乃が彼の手を握り返した。
「……そんなことがあったんですね」
「細川さんが社員だと知ったとき、もしかして出会いは仕組まれたものだったのではないかと疑心暗鬼になったんです。……おかしいですよね。先に声をかけたのは俺なのに」
「そんなことありません! 理屈では分かっていても、同じことが起こるとすごく恐怖を感じるものです。私も同じですから。よく分かります」