白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
「おしっ!」


岡田君が声を上げる。

その声で恐る恐る目を開けると、なんと稜ちゃんは悠々とベースの上に立っていた。

いつものニカッとした笑顔で、白い歯とかわいい八重歯をキラリとのぞかせて・・・・。


「やったぁ!初ヒット!」


思わずバンザイしながら叫んじゃった、わたし。

青雲ベンチは一気に沸き立つ。笹本先生も満足そうに頷いていた。

普段は素知らぬ顔をしている岡田君さえも“よくやった!”と目を輝かせている。


「もうちょい速く走れよな〜」


なんて口ではまたもや皮肉を言うけど、顔と台詞が合ってないよ、岡田君。

かつてのライバルだった稜ちゃんのヒットに喜ばないわけないもんね。

誇らしいよ、稜ちゃんが・・・・。


そう思ったのもつかの間。


「次からはもっと大変になるぞ、送りバント。たかが1本でもヒット打たれたんだ、向こうも必死になるだろうし」

「うん・・・・そうだね」


一難去ってまた一難。

たいていの場合、先頭打者が塁に出たら次のバッターは送るんだけど・・・・。
 

< 91 / 474 >

この作品をシェア

pagetop