白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
グラウンドに目を戻すと、3番の秋沢君が苦戦していた。

ノーボール、ツーストライク。

ちょっと見なかったうちにギリギリまで追い込まれていた。


「稜の声も届かねぇか・・・・」


岡田君が、さっきまでとは違って苦しそうに言う。

稜ちゃんを見ると、秋沢君に“打てる!”って目で合図を送っていた。

でもその秋沢君は、極度の緊張からなのか周りが見えていない。


ブンッ!


結局、大きく外れたボールでも空振り。三振だった。

秋沢君は、今年からレギュラー候補に上がった遅咲きのバッター。

今年になるまで2年間、実力が発揮できずに補欠にさえなれなかった子だった。

初試合、初スタメンのプレッシャーが、秋沢君の力を半減させてしまったみたい。

悔しそうに唇を噛んで戻ってくる秋沢君に、メンバーたちは「ドンマイ、秋沢!」と声をかけた。


「ガチガチなんだよ、お前。打って稜を進めるのが役目だろうが」


岡田君だけは、相変わらず皮肉っぽい言い方。

だけど、肩をポンと押したその手はとても優しく見えた。
 

< 95 / 474 >

この作品をシェア

pagetop