白球と最後の夏~クローバーの約束~
グラウンドに目を戻すと、3番の秋沢君が苦戦していた。
ノーボール、ツーストライク。
ちょっと見なかったうちにギリギリまで追い込まれていた。
「稜の声も届かねぇか・・・・」
岡田君が、さっきまでとは違って苦しそうに言う。
稜ちゃんを見ると、秋沢君に“打てる!”って目で合図を送っていた。
でもその秋沢君は、極度の緊張からなのか周りが見えていない。
ブンッ!
結局、大きく外れたボールでも空振り。三振だった。
秋沢君は、今年からレギュラー候補に上がった遅咲きのバッター。
今年になるまで2年間、実力が発揮できずに補欠にさえなれなかった子だった。
初試合、初スタメンのプレッシャーが、秋沢君の力を半減させてしまったみたい。
悔しそうに唇を噛んで戻ってくる秋沢君に、メンバーたちは「ドンマイ、秋沢!」と声をかけた。
「ガチガチなんだよ、お前。打って稜を進めるのが役目だろうが」
岡田君だけは、相変わらず皮肉っぽい言い方。
だけど、肩をポンと押したその手はとても優しく見えた。