谷間の姫百合 〜Liljekonvalj〜

孔雀や駝鳥(ダチョウ)の羽根で縁取った大きな扇で口元を隠しながらひそひそと話す彼女たち……錚々(そうそう)たるスウェーデン貴族の令嬢たちは、だれもが大きくて華やかな帽子を得意げに被り(実際に、ほかのだれよりも大きくて華やかなものを、と競い合っていた)そして、揃いも揃ってドレスの(ひだ)の部分をまるで釣鐘のように膨らませるために、その下に針金で枠組みを作ったクリノリンを身につけていた。

さらに、フランス菓子のボンボンのようにふっくらとさせた重厚感ある袖とは対照的に、胸元はぱっくりと開かれていて、そのためコルセットで持ち上げられた乳房のほとんどが(あら)わになり、あともう少しでその「先端」が見えそうだ。

おそらく、ダンスを踊る際には、お相手となる殿方にはその「恥ずかしい蕾」が上から覗けるのではなかろうか。


とにもかくにも……彼女たちの「最新ファッション」が、英国の上流社交界では「前世紀の遺物」であることに間違いはなかった。

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