谷間の姫百合 〜Liljekonvalj〜
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スウェーデン王国軍の海軍……Kangliga Flottan(王立艦隊)の本拠地である軍港の街・カールスクルーナから、船でイェーテボリに到着したグランホルム大尉は、その足でシェーンベリ邸にやってきた。

そして、シェーンベリ父子との固い握手によって出迎えられた大尉は、ひとまず男性の訪問客のための応接間(スモーキングルーム)に通され、今般の世界情勢やそれにまつわる政治情勢などを、軍の機密に触れない程度に彼らと語り合って情報交換したのち、ようやくリリの(もと)へと姿を現した。


(やしき)の南側に造られた大きく張り出したアーチ状の屋根の下、広い庭園が一望できるよう窓が最大限に切り取られた温室(オランジュリー)に、リリはいた。

そこにはAlmedahls(アルメダールス)の布地がふんだんに使われた座り心地のよい長椅子(ソファ)が並べられ、晴れた日はもちろんのこと、雨の日も雪の降る日もどんな天候であろうと、珈琲(フィーカ)を飲みながら目の前の庭園をゆったりと愛でることができる談話室(サロン)ともいうべき場所であった。

だから、スモーキングルームやドローイングルームなどとともに訪問客をもてなす「応接間」の一つになっていた。

しかし、今の彼女にとっては、ちっとも居心地の良い場所とは思われなかった。


ついに……このときが来たのだ。

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