谷間の姫百合 〜Liljekonvalj〜
オランジュリーに入ってきたグランホルム大尉を、リリは緊張から青ざめた表情で見上げると、姿勢良く腰掛けていたソファから、すっ、と立ち上がった。
父や兄が気を利かせたのであろうか。
人払いされ、この部屋には彼ら以外の者はいなかった。
「ごきげんよう……」
リリは形式に則ったカーツィをした。
「グランホルム大尉、この度は、わざわざお呼び立てして……」
濃紺のスウェーデン海軍の軍服を纏った大尉は、答礼として彼女の手を取り、その甲にぎりぎり触れぬ口づけをした。
「リリコンヴァーリェ嬢、
あなたがこれからのことについて私に話があるという手紙を、シェーンベリ……あなたの兄からもらったのだが」
天候の挨拶すらないままに、大尉は単刀直入に訊いてきた。彼の琥珀色の瞳が彼女をぴたりと見据えている。まるで、尋問のようだ。
軍人らしく威圧感のあるその鋭い視線に圧倒されて、思わず目を逸らしそうになる。
けれども、心を励ましてリリは告げた。