谷間の姫百合 〜Liljekonvalj〜

「それでは、今後あなたが結婚する際の持参金がなくなるのではないのか?」

「ええ、そうね……でも、ご心配はご無用よ。
私はもう、どなたとも結婚するつもりなんてないから」

一介の商人の娘が、式の直前になって貴族の子息との結婚を一方的に反故にするのだ。
今まで父親が地道にこつこつと積み上げてきた地位も名声も、大いに損わせるに違いない。

「……多大なるご迷惑をおかけするあなたには、私にでき得る限りの謝罪をする覚悟もしているし、またその準備もできていてよ。
だから、どうか私の父やシェーンベリの家に対しては、(とが)めないでいただきたいの」

……どのみち、このような娘にまともな縁談など、来るはずがない。


「私はもうすぐ……修道院へ入る手はずになっているの。そこで、修道女として神様に仕え、毎日あなたへの懺悔をしながら、世の中の人のために奉仕活動をして生きていくつもりよ」

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