谷間の姫百合 〜Liljekonvalj〜
……ま、まさか……そんな……
リリは呆然となった。
「わ、私……てっきり大尉から……庶民の出であることを……疎んじられてるとばかり……」
掠れた声で、かろうじてそうつぶやく。
「なぜ、私があなたを疎んじる必要が?
私は未だかつて、あなたにそのようなことを言った覚えはないのだが?」
大尉が怪訝な顔になる。
「もしも、私があなたとの結婚が厭なのであれば、そもそも了承すらしていないが?」
「で、でも……婚約をしても、あなたは素っ気ないままでいらしたわ。
私を疎んじていらっしゃるのか、ほとんどお会いする機会もなかったし、ストックホルムの舞踏会にだって、たったの一度しか私を呼んでくださらなかったわ。
私なんかを、貴族の方々がいらっしゃる場へ連れて行かればならないのは、恥ずかしくお思いになったからではなくて?
だからいつも……私を避けていらっしゃるのではなくて?」
リリの脳裏に、大尉と婚約してからの味気ない日々が甦る。